テイク採用研究所採用ノウハウ

中小企業の採用コストの見直し方|人数・費用・入社後の記録を残す

中小企業の採用コストを見直すときは、広告費の金額だけでなく、その費用で何人がどこまで進んだかを同じ範囲で確かめます。採用人数が少ない会社では、一件の違いで単価や割合が大きく動きます。費用の計算と一人分の経過を並べ、次の募集に残す材料を整理しましょう。

保存原稿『現場の採用』第10章をもとに、小さな会社でも続けられる記録と振り返りを紹介します。大きな集計表を作るより先に、一人分の経過と「次も使うもの・直すもの・まだ分からないこと」を残すところから始めましょう。

1. 次の採用に残すものを、五つに絞る

最初から立派な採用マニュアルを作る必要はありません。次に人が必要になったときに使える材料を、探せる場所に置きます。外部へ制作を頼んでいる場合も、自社の仕事内容や、応募者へ伝えたことを確認できる状態にしておくことが大切です。

残す材料入れておく内容
仕事の説明募集職種、仕事内容、最初に任せる仕事、条件
写真と文章公開できる素材、確認済みの求人文、使用範囲
応募後の連絡受付、日程提案、確定、変更などの文面
面接・受け入れ確認項目、説明済み事項、初日の準備と教育の進め方
結果と改善起きたこと、変えたこと、分かったこと、次の確認

それぞれに更新日と担当者を付けます。「最新版」とだけ書くと、次の担当者にはいつの条件か分かりません。給与や勤務場所が変わったときに、どの求人、面接資料、自動返信へ影響するかをたどれるようにします。

写真には、何を写したものかに加え、公開・使用できる範囲を残します。素材が見つかっても、使用許可や掲載先の範囲が分からなければ、次の担当者が判断できません。古い職場の写真や、すでに変わった設備の説明を、そのまま現在の募集へ使わないようにします。

会社に残す採用力とは、すべてを自社だけで行う能力ではありません。外部の力を借りながらでも、自分たちが何を求め、何を説明し、何を学んだかを持ち続けることです。

2. 一人分の経過を、日時と状態でつなぐ

一件の記録には、応募から入社後までの節目を残します。自動受付と担当者の最初の返信、面接の確定と実施は別の出来事です。まとめて「対応済み」とすると、実際にどこで待ち時間が生じたかが見えなくなります。

記録する区分項目の例
募集の条件募集職種、求人の版、応募日
知った経路会社を知ったきっかけ、応募前に見た情報
対応の経過自動受付、担当者の初回返信、面接確定、面接実施の日時
選考と入社選考結果、連絡日、入社日
入社後90日後の確認予定日、確認日、在籍・非在籍・未到達・不明
次の仕事次の対応、担当者、期限

「会社を知ったきっかけ」と「応募前に読んだ情報」は別の場合があります。知人から聞いて会社名を検索し、採用ページを読んだ人なら、最後に使った入口だけを成果として扱うと実態を見落とします。本人が話した範囲で残し、分からないものは不明とします。

理由の記録も、本人の言葉と会社の推測を分けます。「勤務地について質問があった」は事実ですが、「通勤が嫌で辞退した」は本人へ確認していなければ推測です。推測を記録する場合は、その区分が分かるようにし、断定した理由として集計しません。

連絡先や面接記録を、再利用する一般資料と同じ場所で全社員へ公開しないようにします。管理IDを使う場合も、それだけで匿名になるわけではありません。保存目的、見られる人、保存期間、削除の手順を決め、実際の権限と管理を合わせます。

3. 割合の横に人数を書き、少数の上下を読み違えない

今月は二人面接して一人が入社、来月は一人面接して一人が入社したとします。前者は50%、後者は100%ですが、やり方の効果が倍になったとは言えません。人数が少ないと、一人の違いで割合が大きく変わります。

説明用の数値割合だけの見方合わせて確認すること
入社1人/面接2人50%だった職種、条件、対象期間、まだ結果待ちの人がいるか
入社1人/面接1人100%へ上がった同じ条件で比較できるか、たまたまの違いではないか
応募0人反応がなかった掲載・閲覧の状況、応募導線、募集期間を確認したか

記録が少ないから無意味なのではありません。数字だけで効果を断定できない時期でも、面接で聞かれた質問、案内の行き違い、返信が止まった場所は改善の手がかりになります。「今月の媒体ランキング」を作るより、一件の経過を丁寧に追ったほうが役立つ場合があります。

求人の閲覧はあるのに応募がないときも、すぐ給与が原因と決めることはできません。仕事内容が伝わらない、条件が合わない、応募方法が使いにくいなど、候補を分けて確かめます。閲覧数が取れない媒体なら、取れないものとして扱い、都合のよい推定値を実績に混ぜないようにします。

集計の定義も先にそろえます。応募は延べ件数か人数か、面接は確定か実施か、同じ人から複数の連絡があった場合にどう数えるかを決めます。月ごとに数え方が変わると、改善の前後を比べる土台がなくなります。

4. 90日時点の状況は、観察できた人と未到達を分ける

入社したばかりの人を、90日時点の在籍率の分母へ入れないようにします。入社日から90日が経過した人について、その時点の状況を確認します。まだ日が来ていない人は未到達であり、離職した人として数えるものではありません。

90日を迎えていても結果が確認できない人は、不明と記録します。都合よく分母から外して高い割合を作ることも、確認せず非在籍へ置くことも避けます。不明がある場合はその人数を示し、確定した在籍率として扱わず、確認を進めます。

状態集計するときの扱い
90日に到達・在籍を確認観察対象と在籍人数へ記録
90日に到達・非在籍を確認観察対象と非在籍人数へ記録
90日に未到達観察対象へ入れず、確認予定を残す
90日に到達・結果不明不明人数を明示し、確認担当を決める

年度内の退職者数を期首在籍者数で割った数字と、新しく採用した人の90日時点の在籍率は、対象も期間も違います。名前が「定着率」「離職率」でも、そのまま比較しません。数字の横に、誰をいつまで見たかを書いておきます。

5. 採用コストは、費用と人数の範囲をそろえて単価を計算する

応募一人当たりの広告費は、広告費を応募人数で割って計算できます。ただし、応募後に面接へ進まなかったり、仕事内容が合わなかったりすれば、その数字だけで採用の成果は判断できません。同じ募集について、複数の段階を見ます。

以下は原稿の仮定に基づく計算例です。広告費12万円、応募6人、入社2人、その2人がともに90日を迎え、在籍を確認できた人が1人とします。実在企業の実績や採用費の相場を示すものではありません。

指標計算例の金額
応募一人当たりの広告費12万円 ÷ 6人2万円
入社一人当たりの広告費12万円 ÷ 2人6万円
90日時点で在籍する一人当たりの広告費12万円 ÷ 1人12万円

この例には、担当者の対応時間、紹介料、制作費、教育費などを含めていません。広告費だけの単価と、それらを含めた総費用の単価を同じ表で比較するなら、費用の範囲の違いを明示する必要があります。まず何を含む数字かをそろえます。

対象期間も合わせます。ある募集に使った費用を、別の募集から入社した人数で割ると、何の費用か分からなくなります。複数の募集にまたがる制作費などは、配分するルールを決めて説明できるようにするか、別項目で残します。

6. 週は進行中の対応、月は次の改善を見る

毎週の確認は、いま動いている応募や受け入れが止まっていないかを見る時間です。未返信、日程未確定、条件の回答待ち、初日の準備不足を確認し、次の担当と期限を決めます。募集をしていない時期に、形式だけの会議を増やす必要はありません。

月や募集終了時の確認では、どこで止まったか、どんな質問があったか、変えた説明にどのような反応があったかを整理します。直近の結果だけで担当者の良し悪しを決めず、会社が次に直せることへつなげます。

分けて書く欄記入例
起きたこと面接候補者から、集合場所の入口を尋ねる連絡があった
そこから考えたこと住所だけでは入口が伝わりにくい可能性がある
まだ確かめていないこと送った案内のどこで迷ったか、本人へ確認していない
次にすること案内をスマートフォンで確認し、入口の説明を見直す

表は説明用の例です。変更した日と理由を残し、その後の様子を見ます。求人文、条件、媒体、返信方法を一度にすべて変えると、何が関係したのか判断しにくくなるため、通常の改善ではまず一つ選びます。ただし、安全や誤った条件表示など、すぐ直す必要がある問題を比較のために残すことはしません。

案内を直したあと入口を尋ねる連絡が減ったとしても、それだけで採用数が増えると断定しません。人数や季節、条件の違いもあります。それでも「約束が伝わったか」という途中の変化は確認できます。最終的な入社人数だけを待たず、使える改善を積み重ねます。

7. 外部へ頼むときも、判断と成果物の扱いを確認する

求人広告、採用サイト、応募対応、教育の支援を外部へ頼むことはできます。ただ、「採用をお願いします」だけで始めると、会社が決める条件や選考方針まで相手任せになり、何が残るか分からなくなることがあります。依頼する仕事と会社が判断することを分けます。

契約前に確認すること具体的にそろえる内容
業務の範囲何を制作・対応し、何は会社が行うか
判断の権限条件の変更、応募者への回答、採否を誰が決めるか
成果の確認どの募集・期間・段階の結果を見るか
記録と個人情報何を扱い、誰が見られ、どう引き継ぎ・削除するか
終了後に使えるもの原稿、画像、サイト、記録の権利・利用範囲・引き渡し方法

制作費を払ったことだけで、すべての画像や原稿を無制限に再利用できるとは限りません。契約終了後に修正できるか、データが手元に残るか、どこで使えるかを事前に確認します。サービス名が似ていても実際の業務は異なるため、必要な手続きや役割も内容に合わせて確かめます。

支援を受けたあとに、自社の仕事をどう説明すれば伝わるか、応募者が何に迷うか、どこで対応が止まりやすいかを残します。自社で採用できることは、更新や返信、面接、教育が無料になることではありません。必要な時間と費用を理解して選べる状態を目指します。

8. 直近の一件から、次も使う・直す・まだ不明を残す

最初の振り返りは、直近の募集を一つ選ぶだけで構いません。求人の版と対象期間をそろえ、応募から入社後までの記録を確認します。数字がそろっていないところは不明のまま残し、応募者や新人から聞けた具体的な質問を一つ取り上げます。

  • 次も使うもの:説明が伝わった原稿、案内文、受け入れの手順を一つ。
  • 直すもの:行き違いがあった説明や、止まりやすかった対応を一つ。
  • まだ分からないこと:確認できていない理由や結果を一つ。
  • 次の行動:直す担当、期限、見直したあとに確認する日。

一般に使う改善メモへ、本人を特定できる情報をそのまま転記しないようにします。個別対応に必要な記録は管理範囲を限定し、会社の説明を改善する材料とは分けます。少人数の会社では、名前を消すだけで特定されなくなるとは限らない点にも注意します。

参考:テイク採用研究所『現場の採用は、「誰でもいい」では誰も来ない』制作原稿 第10章・付録10をもとに、記事として再構成しています。

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