テイク採用研究所採用ノウハウ

採用を社長ひとりで抱えない。判断・連絡・確認の役割分担

求人の確認、面接の日程、応募者への返事。すべてが社長の確認待ちになっていないでしょうか。事務担当へ「採用もお願い」と渡しても、何を自分で決めてよいか分からなければ、結局は同じ場所で止まります。

『現場の採用』の役割分担の考え方をもとに、仕事の切り分け方と引き継ぎの条件を整理します。採用担当者を増やすことを前提にせず、一人が複数の役割を兼ねる会社にも使える方法です。登場する会社、やり取り、予定は説明用の検討例です。

1. 「採用担当」という一つの箱を、具体的な仕事へ分ける

最初に分けるのは人ではなく、仕事です。「応募対応は事務」「面接は社長」のような大きな区分だけでは、日程の候補を誰が出すか、質問の答えを誰が調べるかが残ります。前の採用で実際に手を動かしたことを、動詞で書き出してみます。

大きな仕事分ける作業の例迷いが残りやすい点
求人を出す仕事の聞き取り、条件確認、原稿作成、公開確認誰が事実を確認して公開可とするか
面接を準備する候補日の確保、本人との調整、確定連絡予定変更を誰が判断するか
入社を迎える初日の予定、道具、本人への案内、現場への共有準備がそろったことを誰が確かめるか

書き出すときは、普段から発生する確認や修正も含めます。「求人を出す」だけを数え、誤記の確認や募集終了時の更新を抜くと、見かけ上は分担できても実際の負担は変わりません。どの仕事の前後で社長への問い合わせが集中しているかを見ると、分ける単位が見つかります。

六つの採用段階をすべて一度に整える必要はありません。まず今止まっている一つの仕事を選び、その前に必要な情報と、次へ渡すものまで書きます。人員を増やせなくても、仕事の境目を明らかにすることはできます。

2. 判断する人・連絡する人・確かめる人を決める

同じ案件でも、会社の方針を決めること、決まった内容を伝えること、現場の事実を確認することは別です。採否を社長が判断するとしても、確定した日程の連絡まで社長一人が送る必要はありません。一方で、連絡を担当した人が、その場で待遇の例外を約束してよいとは限りません。

役割担うこと完了の確認
判断条件、採否、例外への対応を決める決定内容と適用範囲が明確
確認仕事・設備・予定などの事実を調べる事実と未確認が区別されている
連絡確認済みの内容を本人や関係者へ伝える伝えた内容・日時と次の対応が残る

三つの役割は三人の社員を意味しません。一人の社長がすべて兼ねる場合も、今は何の仕事をしているか分けて考えます。確認中なのに結論を伝えたり、決めたつもりで連絡を忘れたりする食い違いを防ぐためです。

分担する場合は、各作業の主担当を一人決めます。「社長と現場で対応」と二人の名前だけを書くと、互いに相手が動くと思うことがあります。協力者は複数いても、次の進捗を確かめる人と、判断をまとめる人は区別して記録します。

3. 任せる範囲を、よくある場面で確かめる

「困ったら相談して」では、何が困った状態なのかが担当者によって変わります。日程変更、条件についての質問、準備の遅れなど、実際に起きそうな場面で、どこまで進めてよいかを決めます。誰が偉いかを決める表ではなく、相手を待たずに進められる仕事を明確にする表です。

場面担当者だけで進める範囲確認してから進めること
面接日時の調整あらかじめ確保した候補枠を案内候補外の日時・面接者の変更
仕事内容への質問確認済み資料にある説明を案内資料にない業務や例外の約束
条件変更の希望希望を受け取り、判断担当へ渡す会社として対応できるかの回答
公開原稿の修正決定済みの誤記修正を準備条件や募集対象に関わる変更

この表は例です。自社で任せられる範囲は、担当者が確認できる情報と、会社として決めたルールに合わせます。明文化されていない例外が出たら、その場で無理に判断させず、誰が決めるかを確認します。繰り返し起きるものだけ、次の運用へ追加すると表が肥大化しにくくなります。

任せる範囲を広げるときは、資料だけ渡して終えず、例題を一緒にたどります。「この質問が来たら、どこまで答えるか」を本人の言葉で確認すると、書き手には明らかでも受け手には曖昧だった境目が見つかります。

求人原稿の書き方の例

見直す前

事務担当から相談が来るたびに、社長がその場で答える。前にどう決めたかは記録していない。

具体的にすると

同じ質問が続いたため、確認済みの案内を回答用資料へ追加。今回だけの例外は通常の説明へ混ぜず、適用する案件と判断者を個別記録に残す。

任せる範囲を育てる説明用の例。例外を一度認めたことを、今後の全員への約束にしないよう区別します。

社長と現場責任者の判断が食い違ったときも、連絡担当が間を取った表現で決着させないようにします。何が未決定で、誰がいつまでにまとめるかを明確にします。その間に本人への連絡が必要なら、確定事項と確認中の内容を分けて伝えます。役割を分ける目的は責任を押し付けることではなく、決まっていないことを決まったように伝えないためでもあります。

4. 引き継ぎには、次の人が動ける材料を付ける

「面接の件、お願いします」という伝言は、受け取った人が背景を探すところから始まります。渡す情報は、案件、現在の状態、必要な判断、期限、次に連絡する人の五つを基本にします。長い経緯を全部転送するより、相手が何をすれば次へ進むかを先に示します。

求人原稿の書き方の例

見直す前

応募がありました。日程をお願いします。

具体的にすると

[管理ID]の面接日程について確認です。本人は[希望枠]を希望、現場担当の予定は未確認です。[確認日]までに対応できる候補を決めてください。本人への確定連絡は事務担当が送ります。

社内の引き継ぎ例。必要な情報だけを、閲覧できる担当者が限定された場所で扱います。

引き継ぎを送っただけで、担当の仕事を完了にしないことも重要です。相手が受け取ったか、期限内に対応できるか、情報不足がないかを確かめます。返信がないときは、依頼の再送を繰り返すだけでなく、決めた戻し先へ知らせる条件を用意します。

会社として共有する手順書と、応募者個人の記録は分けます。全員が使う分担表には個人の事情を載せず、案件ごとの連絡内容は必要な人に限定します。分担を進めることが、採用情報を誰でも見られる状態にすることと同じにならないようにします。

5. 検討例:社長への確認待ちが重なる会社を整理する

ここでは、社長が現場へ出る時間が長く、事務担当が応募窓口、現場責任者が面接に同席する会社を考えます。事務担当は毎回、社長と現場の空き時間を別々に聞いていました。本人の希望を受け取った後に予定が変わり、候補日の出し直しが続いています。

問題を「事務担当の調整が遅い」と決めつけず、どの判断を待っているかを見ます。この例では、候補日の確保、例外の日程を受ける判断、本人への確定連絡が混ざっています。そこで社長と現場が先に候補枠を確かめ、事務担当はその範囲で調整する形へ変えます。

変えること新しい担当・条件確認する結果
候補枠の確保社長と現場が、本人への案内前に確認案内後の社内都合の変更が減ったか
候補内の調整事務担当が確定まで連絡社長待ちにならず進められたか
候補外の希望判断担当へ期限付きで相談本人への次の連絡予定が残るか

この変更で採用が決まるという話ではありません。予定を確定するまでの行き違いを減らせるか確かめる例です。候補枠を出せないほど現場の予定が変わるなら、予約方式自体を見直します。運用表を現場へ押し付けず、実際の制約を表へ戻すことが必要です。

初回は一件を最後まで追い、どこで予定が変わったかを残します。うまく進んだ場合も、その人の希望が偶然候補に合っただけかもしれません。複数の事情を混ぜて成功・失敗を決めず、次の案件でも使える手順だけを残します。

6. 不在時の代わりと、対応できる量を確認する

主担当が決まっても、その人が休む日や急な現場対応で動けない日はあります。代理担当を置くなら、連絡先を書くだけでなく、必要な情報を見られるか、どこまで対応できるかを確かめます。主担当と同じ判断を任せられない場合は、確認済みの案内まで、と範囲を絞ります。

代理を頼める人がいない会社は、存在しない体制を表に書く必要はありません。問い合わせの確認時間、返答予定の伝え方、予定を変更するときの連絡方法を決めます。即答できないことと、誰も次の対応を把握していないことは別です。一人でも、次に何をするかを残しておけます。

  • 不在になるとき、進行中の案件と次の対応をどこへ残すか。
  • 代理が参照する資料はどれで、最新かどうか判断できるか。
  • 判断できない質問が来たとき、誰へ戻すか。
  • 期限内に決まらない場合、本人への連絡を誰が担うか。
  • 通常業務と採用の仕事が重なった場合、何を調整するか。

分担は、空いていそうな人へ作業を足すことではありません。事務担当が請求処理で手いっぱいなら、採用の仕事を追加する時間をどう確保するかまで話します。担当を移した結果、別の仕事が遅れていないかを見ることも、分担後の確認に含めます。

7. 一人で兼ねる場合は、役割を予定と記録で分ける

すべて自分で行う社長にとっても、役割分担表は無意味ではありません。仕事ごとに必要な情報と終わった状態を書けば、現場作業から戻ったときに、途中の採用業務を再開しやすくなります。頭の中にある「あとで返す」を、確認待ちと連絡待ちへ分けます。

たとえば、昼に応募を確認し、仕事内容について現場の資料を見直してから夕方に返答するなら、その間の状態を一行で残します。「質問を受領、確認するのは作業範囲、次の連絡は夕方」という記録です。予定が変われば、その記録を見て返答見込みを修正できます。

毎回繰り返す連絡は、確認済みのひな形を用意します。ただし、日付や条件を古いまま使わないよう、差し替える欄と確認する資料を残します。一人の作業を整理した記録は、将来ほかの社員や外部へ一部を頼む際の説明にも使えます。

8. 分担表を使って一件進め、止まった箇所だけ直す

分担表の完成は、担当者の名前がすべて埋まった日ではありません。実際の一件を進め、引き継ぎを受けた人が迷わず動けるかを確かめたときに、使える形へ近づきます。確認の場では、担当者を採点するより、足りなかった情報や決められなかった範囲を探します。

分担表に残す欄記入する内容
作業・開始のきっかけ何が起きたら、何を始めるか
主担当・判断担当実行する人と、例外を決める人
渡すもの・完了条件次の人へ何がそろえば渡せるか
期限・不在時の扱いいつ確認し、決まらないときは誰へ戻すか
次に直す点実際に迷った箇所を一つ

担当者全員を集める大きな会議にしなくてもかまいません。渡した人と受け取った人が、一件の記録を照らし合わせるところから始めます。「返事をしたはず」を連絡日時へ、「忙しかった」をどの判断待ちだったかへ変えると、次の修正が具体的になります。

社長がすべての作業を抱える状態から、一つずつ、任せられる仕事と会社が判断する仕事を分ける。その積み重ねが、誰かの記憶だけに頼らず採用を続ける土台になります。

参考:テイク採用研究所『現場の採用は、「誰でもいい」では誰も来ない』制作原稿 序章 まず、最初の一週間にやること,第1章 自社は、どこで詰まっているか,第10章 会社に採用力を残す,付録2 採用の役割分担表をもとに、記事として再構成しています。

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